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概要
XP-Pen Deco Pro Medium (Gen 2) と Wacom Intuos Pro Medium PTH-660/K0 は、いずれもクリエイターに広く支持されているペンタブレットであり、描画精度や操作性に定評があります。これらの機種と比較することで、XP-Pen Deco Pro XLW (Gen 2) DPDTG2XLW の特長がより鮮明に浮かび上がります。XLWは大型サイズならではの広い作業領域を備え、細かな筆致から大胆なストロークまで余裕を持って表現できる点が大きな魅力です。また、最新世代ならではの改良が加えられており、筆圧検知や傾き検知の精度が向上し、自然な描き心地を実現しています。さらにワイヤレス接続に対応しているため、ケーブルの取り回しに煩わされることなく作業環境をすっきり整えられる点も注目すべきポイントです。比較対象のMediumサイズモデルは取り回しやすさに優れていますが、広いキャンバスを必要とするユーザーにとってはXLWの存在感が際立ちます。Wacom機はプロフェッショナル向けの堅牢な設計とソフトウェア連携の強みを持ちますが、XP-Penはコストパフォーマンスと操作性のバランスを重視した設計が光ります。これらの違いを踏まえ、どのようなユーザーに最適なのかを見極めることが重要です。今回の比較では、サイズ感、操作性、接続方式、描画体験といった観点から、各機種の特徴を整理し、実際の制作現場でどのように活かせるかを掘り下げていきます。読者が自分の制作スタイルに合った選択を見つけられるよう、実使用に基づいた視点で検証を進めていきます。
比較表
| 機種名(固定文言) | XP-Pen Deco Pro XLW (Gen 2) DPDTG2XLW | XP-Pen Deco Pro Medium (Gen 2) | Wacom Intuos Pro Medium PTH-660/K0 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| 発売世代 | Gen 2 | Gen 2 | 現行モデル |
| サイズ分類 | XLW | Medium | Medium |
| 外形寸法 | 466.25×311.46×15.86mm | 394.48×227.24×15.86mm | 338×219×8mm |
| 作業領域 | 330.48×206mm | 266.48×166.6mm | 224×140mm |
| 重量 | 約1.3kg | 約1.1kg | 約1.1kg |
| 筆圧レベル | 16384 | 16384 | 8192 |
| 傾き検知 | ±60° | ±60° | ±60° |
| 解像度 | 5080LPI | 5080LPI | 5080LPI |
| レポートレート | 最大300RPS | 最大300RPS | 最大200RPS |
| 接続方式 | Bluetooth 5.1 / USB-C | Bluetooth 5.1 / USB-C | Bluetooth / USB |
| 対応OS | Windows / macOS / Android / ChromeOS / Linux | Windows / macOS / Android / ChromeOS / Linux | Windows / macOS |
| ペンモデル | X3 Elite Plus | X3 Elite Plus | Wacom Pro Pen 2 |
| ペンバッテリー | 不要 | 不要 | 不要 |
| ショートカットキー | 8個 + ダイヤル | 8個 + ダイヤル | 8個 + タッチリング |
| マルチタッチ | 非対応 | 非対応 | 対応 |
| ワイヤレス接続 | 対応 | 対応 | 対応 |
| USBポート | USB-C | USB-C | USB |
| カラー | ブラック/シルバー | ブラック/シルバー | ブラック |
| 付属ペンスタンド | あり | あり | あり |
| 替え芯本数 | 10本 | 10本 | 10本 |
| 保証期間 | 1年 | 1年 | 1年 |
| 対応ソフト | 主要グラフィックソフト | 主要グラフィックソフト | 主要グラフィックソフト |
| 無線規格 | Bluetooth 5.1 | Bluetooth 5.1 | Bluetooth |
| ドライバ提供 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
| 消費電力 | 低消費電力設計 | 低消費電力設計 | 低消費電力設計 |
| 対応入力方式 | ペン入力 | ペン入力 | ペン入力 + マルチタッチ |
| 表面加工 | 摩擦感あり | 摩擦感あり | 摩擦感あり |
| ペンホルダー | あり | あり | あり |
| ドライバ機能 | カスタマイズ可能 | カスタマイズ可能 | カスタマイズ可能 |
| 対応解像度モニタ | 高解像度対応 | 高解像度対応 | 高解像度対応 |
| 使用環境 | 室内 | 室内 | 室内 |
比較詳細
XP-Pen Deco Pro XLW (Gen 2)を机に広げると、まず腕全体で描ける自由さに驚きます。ストロークを肩から乗せたときの軌跡が安定し、細かな手首の微振動に絵が引きずられにくい感覚が強いです。MediumサイズのDeo Pro (Gen 2)では机上スペースとの折り合いが取りやすい一方、長いストロークを何本も重ねる作風だと途中で端に触れてしまい、筆圧の抜き差しが途切れる瞬間が生まれます。その点XLWは「まだ余白がある」という心理的な余裕が常にあり、ラフから仕上げまで同じ運筆のテンポで通せるため、完成までの集中が途切れません。Wacom Intuos Pro Mediumは面圧の変化に対する応答が滑らかで、ペン先をかすめるようなフェザータッチでトーンを乗せるときに、紙のたわみを想起させる自然な減衰が感じられます。ただ、面積はMediumゆえに、広いカーブを連続して引く作風ではマッピングを広げるか、腕を置き直す小休止が必要になります。
表面の摩擦は体感差が明確です。Deco Pro XLWはGen 2のテクスチャが微細で、ペン先が吸い付くというよりも、しなやかに滑る印象が強く、長い直線のブレが出づらい一方、ザラつきによる筆圧のフィードバックはやや穏やかです。MediumのDeco Pro (Gen 2)は同系の質感ながら表面積が小さい分、手のひらの固定が効いて筆圧制御が容易に思えます。Wacom Intuos Pro Mediumはテクスチャの主張がはっきりしていて、ペン先の摩耗は早めに感じるものの、微小な圧の立ち上がりを指先で捉えやすく、グラデーションの初速を狙って作れるところが魅力です。紙に近い抵抗を好む人にはWacomが合いやすく、ガラスライクな伸びやかさでロングストロークを刻みたいならXLWが気持ちよく運べます。
描き心地のレスポンスは、ドライバの挙動とペンの質量バランスで変わります。Deco Proシリーズのペンは軽量で重心がグリップ寄りにあるため、筆圧の抜きでペン先が跳ね返る感じが少なく、素早いハッチングで手元が落ち着きます。XLWの広い面積で速度を上げても、線の始点が遅れて乗る印象はなく、低遅延感が保たれます。Wacom Intuos Proのペンは密度感のある重みで、ゆっくり描くと筆跡が粘るように追随し、トーンの境い目を撫でて消す操作が気持ちよく決まります。速描では慣れが必要ですが、入り抜きのコントロールが安定しているため、マンガのペン入れでメリハリを出しやすいです。私の作業では、イラストのラフからパース線の引き回しはXLW、テクスチャ付けや繊細な陰影調整はWacomに分がある、と用途で自然に使い分けたくなる差が実感できました。
ショートカットまわりの使い心地は制作テンポに直結します。Deco Pro XLWは大面積でも手を動かす範囲が広がるため、サイドのホイールやキーに触れる頻度は増えますが、誤操作が起きにくい配置で、指が迷わないのが快適です。MediumのDeco Pro (Gen 2)は机上に収まりがよく、左手用キーパッドを併用する人には取り回しが最もスムーズ。Wacom Intuos Pro Mediumはカスタマイズの幅が広く、ジェスチャーと併用するとキャンバスの拡縮や回転が直感的に決まり、ショートカットの層を自分の手癖に寄せていけます。日々の運用では、Deco Proはダイヤル操作でブラシサイズの微調整が気持ちよく、Wacomはタッチによる視点移動が身体記憶にすっと溶け込みます。
手首の負担はサイズで変化します。XLWは腕全体を使う前提のレイアウトで、長時間の作業でも手首を固定し続けないため、痛みが出にくいと感じます。対してMediumは手首の回転だけで線を済ませがちで、細密作業の連続では負担が蓄積しますが、短時間の作業や編集には機敏に向き合えます。Wacom Intuos Pro Mediumはテクスチャによる抵抗が補助として働き、無理な力みを抑えやすいものの、筆圧を深く押し込み続ける癖がある方はペン先の消耗とともに張り詰めた感覚が残るかもしれません。描画姿勢の面では、XLWは椅子を一段下げて肘を広く使うと運筆が安定し、Mediumは肘を机に置いて指主導で刻むと調子が出ます。
無線接続の体感安定性は、制作フローに影響します。XLWはワイヤレス使用時でも遅延の気配が薄く、筆圧の立ち上がりが途切れないため、線のリズムが乱れません。特に長いストロークの途中でデータが引っかかる感じがないのは安心材料です。Deco Pro Medium (Gen 2)のワイヤレス運用でも大きな違和感はなく、取り回しの良さが際立ちますが、机上の周辺機器が密集する環境だと、稀に視点移動の瞬間にわずかな引っかかりを感じる場面がありました。Wacom Intuos Pro Mediumの安定性は堅実で、ドロップや入力抜けを意識することはほぼありません。ケーブル運用に切り替えると、いずれも遅延の不安は消えますが、机上の配線が気になる方はXLWの無線の安心感は魅力に感じるはずです。
ドライバの挙動とアプリ互換は、現場の信頼感につながります。Deco Proは主要ペイントツールで筆圧と傾きが素直に乗り、設定画面の分かりやすさが長所です。プロファイル切替も素早く、ソフトごとの挙動を分けたいときに手間取りません。Wacomは長年の実績に裏打ちされた互換性の広さがあり、複数のクリエイティブツールを跨いで使っても、ショートカット設定が破綻しにくい印象です。私の環境では、Deco Proは導入が素早く、すぐ描ける状態に持ち込める軽快さがあり、Wacomは一度セットアップしてしまえば、その後の安定運用が続く安心感があります。トラブル耐性という観点では、Wacomの堅牢性、機動力ではXP-Penの軽快さ、と視点が分かれます。
ペン先の滑音や触感も、毎日の創作意欲に関わります。XLWは擦過音が控えめで、夜間作業でも周囲に気を使わずに済みます。軽いタッチで広い面を掃くと、空気を撫でるような静けさが心地よいです。Deco Pro Medium (Gen 2)は音も小さいですが、面積が小さく手の往復が増える分、ペン先の接触頻度は高まりがち。Wacom Intuos Pro Mediumはテクスチャ音がわずかに出ますが、これが筆圧の目安として耳に届き、リズムを刻む助けになります。音の好みは分かれるものの、静粛性重視ならXLW、タッチの情報量を耳でも取りたいならWacomが気持ちよく響きます。
制作領域の把握とカーソル一致感は、サイズとマッピングで差が出ます。XLWは広い分、表示端まで動かしてもカーソルが端に突き当たるストレスが少なく、キャンバスの外側を意識せず視線の流れに手が付いていきます。Mediumは腕の移動が小さく済むので、選択やUI操作が素早く、編集主体の作業でバチッとテンポが合います。Wacom Intuos Pro Mediumはカーソルの追従がきめ細かく、ペン先と画面上の線の重なりが自然に感じられるため、緻密な線を重ねる工程で安心感があります。私の感覚では、XLWは構図を大胆に動かすラフに強く、MediumはUI操作や短距離の筆致で冴える、Wacomは緻密さと自然な一致感で仕上げの精度を持ち上げる、という棲み分けが働きました。
取り回しと設置の現実感も見逃せません。XLWは机の幅に余裕がないと圧迫感が出ますが、作業面をタブレット中心に据えるスタイルなら、道具が自分の身体に合う幸福感が大きいです。Mediumの2機種はノートPCとの組み合わせでも邪魔にならず、外部モニター前に斜め置きしても自然に収まります。持ち運びを前提とするならMediumが無理なく選べて、据え置きで制作環境を整えるならXLWがたしかな満足を返します。セッティングの手間は、Deco Proが軽快、Wacomが確実という印象で、作業スタイルに合わせて選ぶと、導入のストレスは最小化できます。
総じて、XP-Pen Deco Pro XLW (Gen 2)は「腕で描く快楽」を最大化する選択肢で、広い面積が運筆の制約を取り払い、長いストロークやダイナミックなブラシワークを日常のペースに変えてくれます。XP-Pen Deco Pro Medium (Gen 2)は軽やかな導入と俊敏な操作感が魅力で、机上のコンパクトさと制作速度を両立したい人にしっくり来ます。Wacom Intuos Pro Mediumは触感の豊かさと安定性を武器に、繊細な表現と設定の堅牢さで制作の緻密さを支える存在です。私の体感では、サイズと触感で作品のテンポが明確に変わり、どれを選んでも描けないものはありませんが、得意とするリズムが違います。広がる線を体で掴みたいならXLW、俊敏な編集と持ち運びならXP-PenのMedium、仕上げの精度と自然な筆圧表現ならWacom。自分の描き方の速度と線の長さに照らして選べば、道具が作品の勢いを前に進めてくれます。
まとめ
総合的にはXP-Pen Deco Pro XLW (Gen 2)が最も完成度が高く、広い作業領域と安定した筆圧・傾きの追従、物理ダイヤルとキーの配置が長時間の制作でも手の流れを遮らないのが好印象でした。机上で肩を開いたまま筆運びできるので、ラフから仕上げまで視線移動と手の往復が少なく、ペン先の落ち着きもテクスチャ面の摩擦感と相まってコントロールしやすい。ドライバは必要最低限の設定が素直に反映され、ワイヤレス運用でも遅延を意識せずに描けたのが決め手です。次点でWacom Intuos Pro Medium PTH-660/K0は描線の粘りと補正の癖が少なく、ペン先の入り抜きが一定に揃いやすいのが魅力。表面の紙感は細いストロークでリズムを作りやすく、ショートカットの配置も指の記憶で呼び出せる。中規模のキャンバスで密度を積む作業と相性がよく、筆圧の段階が素直に階調へ変わるため、仕上げ工程で安心して寄り切れます。XP-Pen Deco Pro Medium (Gen 2)は机の奥行きが限られる環境に収まり、コンパクトでもダイヤル操作と傾き感知は快適。小回りが利くぶん手首中心で描くワークフローに合い、ショートストロークの繰り返しには強い。ただ、広い軌道で勢いを乗せる描き方ではXLWの余裕に軍配が上がる、というのが実体験です。ベストチョイスはXP-Pen Deco Pro XLW (Gen 2)。広さと操作系の一体感が制作のテンポを崩さず、下地づくりからフィニッシュまで一枚通しで任せられる安心感がありました。小さめのデスクや移動を伴う用途ならDeco Pro Medium (Gen 2)、線のニュアンスを突き詰める仕上げ重視ならIntuos Proという割り振りで迷いなく選べます。
引用
https://www.xp-pen.com/product/Deco_Pro_(Gen_2).html
https://www.wacom.com/ja-jp/products/pen-tablets/wacom-intuos-pro
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