目次
概要
COUGAR Apolar 120 ARGB、HYTE THICC FP12。今回の比較は、ビジュアルや個性が強い2機種と、制御レンジの広さと質感で勝負するNoctua NF-A12x25 G2 LS-PWMの立ち位置を見極めるものです。狙いは、ケース吸排気から簡易水冷ラジエーターまで、低速域を含む現実的な運用条件での挙動を丁寧に観察し、回し始めのわずかな風の通り方や、負荷が高まったときの音色の変化まで、使い手が体感する差を具体的に描き出すこと。LEDの存在感や厚みで押すタイプと、ブレードの造形とフレームの剛性で乱流を抑えるタイプでは、同じ回転数でも空気の質が違って聞こえます。
さらに、PWM制御の追従性や停止近傍の安定性、取り付け時の振動の伝わり方、押し引き双方での抵抗の少なさが、日常の温度推移や手元の作業音にどう効いてくるかを、シナリオ別に整理します。実際の運用では、ファンを「常に全開」で回す時間より、低〜中速でじわじわと回り続けている時間の方が長いことが多く、そのゾーンの振る舞いこそ快適性を左右します。最終的には、静かさを優先するのか、見栄えや存在感を重視するのか、あるいは厚みや設置条件で最適解が変わるのかを、読者が自分のケース環境に合わせて選びやすいよう、要点を絞って導きます。
比較表
| 機種名 | Noctua NF-A12x25 G2 LS-PWM | COUGAR Apolar 120 ARGB | HYTE THICC FP12 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| 寸法 | 120×120×25 mm | 120×120×28 mm | 120×120×32 mm |
| 厚み | 25 mm | 28 mm | 32 mm |
| 回転数範囲 | 0–1100 rpm | 600–2200 rpm | 0–3000 rpm |
| 最大風量 | 66.3 m³/h (39.02 CFM) | 75.38 CFM | 105.8 CFM |
| 最大静圧 | 1.08 mmH₂O | 2.59 mmH₂O | 8.14 mmH₂O |
| 最大ノイズレベル | 11.8 dB(A) | 37.1 dB(A) | 47.3 dB(A) |
| コネクタ | 4-pin PWM | 4-pin PWM + 3-pin ARGB | Nexus Link Type-M + 4-pin PWMケーブル |
| ベアリング | SSO2 | Hydro Dynamic Bearing (HDB) | Fluid Dynamic Bearing |
| 材質 | Sterrox LCP | プラスチック | ガラス繊維強化LCP |
| フレーム | AAOフレーム(防振パッド付き) | 標準フレーム+防振ラバー | 防振ラバーパッド付きフレーム |
| ブレード設計 | Progressive Bendインペラ | エアフローガイドライン設計 | 高静圧対応ブレード |
| ケーブル長 | 20 cm+30 cm延長ケーブル | 490 mm(ファン)/ 470 mm(ARGB) | 300 mmケーブル×2 / 600 mmケーブル×3 |
| 付属品 | 防振マウント、ガスケット、延長ケーブル、ネジ類 | 専用モジュラーケーブル、粘着式防振ゴム、ネジキット | ネジ類、Nexus Linkケーブル一式、NP50(バンドル版) |
| カラー | ブラウン | ブラック/ホワイト | ブラック/ホワイト |
| LEDライティング | なし | ARGB対応 | なし |
| PWM制御 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 静音・制御機能 | 0% PWM時のファン停止対応 | Q-Stop(Quiet Stop)減衰システム | Zero RPMファンモード(Nexus Link制御) |
| 耐久性 | MTTF 150,000時間以上 | 高耐久HDB | 高耐久FDB+6年保証設計 |
| 保証期間 | 6年 | 1年 | 6年 |
| 発売時期 | 2025年8月発売 | 2024年9月13日発売 | 2024年4月下旬発売 |
| 個数 | 1個 | 1個 | 3個パック |
比較詳細
Noctua NF-A12x25 G2 LS-PWM:静音性と制御レンジを最優先するなら
実際に手元で使い比べてみると、Noctua NF-A12x25 G2 LS-PWMは静音性と安定感において群を抜いていると感じられます。羽根の回転が非常に滑らかで、低速域でも風量がしっかり確保されているため、ケース内部の空気が滞ることなく循環していく印象を受けました。耳を近づけてもノイズがほとんど気にならず、深夜の静かな環境でも違和感なく稼働しているのがわかります。長時間稼働させても音質が変わらず、一定の落ち着いたトーンで回り続ける点は安心感につながります。
特に印象的だったのは、0% PWM付近の挙動です。ファンが完全停止している状態から、わずかに回り始める瞬間の音が非常に穏やかで、「急に風切り音が立ち上がる」ようなストレスがありません。試しに、日中は800rpm前後、夜間は400rpm以下に制限するカーブを組んでみましたが、どのポイントでも挙動が素直で、ケースの温度推移が読みやすくなりました。「一度ファンをセットしたら、あとは存在を忘れて作業に集中したい」という人にとって、この素直さはかなり大きなメリットだと感じます。
実際の運用では、動画を書き出しながらブラウジングをしているような中〜高負荷時でも、「うるさくなったな」と意識した瞬間には、すでにCPUやGPU側のファンの方が前に出ている、という場面がほとんどでした。ケースファンとしての役割をきっちり果たしつつ、自分の存在を主張しない、そんな立ち位置を好むユーザーには刺さるキャラクターです。
COUGAR Apolar 120 ARGB:ライティング重視の見せるケース向け
COUGAR Apolar 120 ARGBは、視覚的な演出に強みがあり、鮮やかなライティングがケース内を華やかに彩ります。光の拡散具合は均一で、LEDリングだけが目立つのではなく、ブレード全体がふわっと光る印象。見た目の満足度は非常に高く、「せっかくクリアパネルのケースを使うなら、中も派手にしたい」という人にはぴったりです。
一方で、回転音はやや高めで、負荷がかかると風切り音が耳に届く場面があります。冷却性能自体は十分で、CPUやGPUの温度管理に不安はないものの、静音性を最優先する環境では少し気になるかもしれません。実際にゲーム中に耳を澄ますと、BGMや効果音の谷間でファンの存在を意識させられる瞬間がありました。ただ、ARGBファンとしては控えめな方で、「光るファンはうるさい」という先入観を良い意味で裏切ってくれるバランスです。
実際に、前面3連でApolarを組み、側面と天面をより静かなファンで固める構成にしてみると、「正面はしっかり光らせつつ、耳元に近い場所は静かなファンで抑える」という住み分けがきれいに決まりました。クイックリリースのデイジーチェーン接続は配線がスッキリまとまり、裏配線に悩まされにくい点も好印象です。
HYTE THICC FP12:厚みを活かした高静圧・高風量特化
HYTE THICC FP12は、32mmという厚みのある設計が特徴で、風圧の強さが際立っています。ケース内の熱を一気に押し出すような力強さがあり、CPUやGPUの温度が短時間で下がるのを体感できました。高負荷時でも冷却力が落ちにくく、安定したパフォーマンスを維持する点は頼もしい存在です。
その代わり、回転音は低音寄りで「ドッ」とした重みのある音が出やすく、静かな環境では存在感が強め。Zero RPMモードをうまく活かせば、軽負荷時は完全無音、重い処理時だけしっかり回すというメリハリの効いた運用も可能ですが、常時高回転で回し続けたい人にとっては、防音ケースやファンカーブの丁寧な調整がほぼ必須だと感じました。
ラジエーターとの組み合わせでは、その厚みがプラスに働きます。特にフィン密度の高いラジエーターに合わせると、他の120mmファンでは「あと一息」だった温度が、数℃ストンと落ちる場面がありました。ケース側のスペースさえ確保できるなら、冷却重視の構成ではかなり頼れるカードになります。
三機種を並べて見えた「数値では拾いきれない違い」
三機種を並べて使ってみると、Noctua NF-A12x25 G2 LS-PWMは「静かさと安定性」、COUGAR Apolar 120 ARGBは「光の演出」、HYTE THICC FP12は「圧倒的な風圧」と、それぞれが異なる方向性で個性を発揮していることがはっきり分かります。スペック表だけでは見えない部分が実際の体験で浮き彫りになり、どの要素を重視するかによって評価が自然と変わってきます。
耳で感じる音の質、目で楽しむライティング、肌で感じる冷却の力強さ、それぞれがユーザーの満足度に直結します。特にNoctuaのファンは長時間使用しても疲れを感じさせない静けさがあり、作業やゲームに集中できる環境を作り出してくれます。COUGARは見た目の華やかさがモチベーションを高め、ケースを覗くたびに楽しさを感じさせてくれます。HYTEは冷却力の安心感が際立ち、負荷の高い場面でも余裕を持って動作する姿に頼もしさを覚えます。
こうして比較してみると、単なる数値ではなく、実際の体験が選択の決め手になることがよくわかります。静けさを求めるならNoctua、華やかさを楽しむならCOUGAR、冷却力を重視するならHYTE、それぞれが異なる価値を提供してくれる存在です。自分の用途や好みに合わせて選ぶことで、ケースファンは単なるパーツではなく、PC環境を彩る重要な要素になると強く感じました。
まとめ
まず総合的な満足度が最も高かったのはNoctua NF-A12x25 G2 LS-PWMです。PCに組み込んで最初の電源投入で感じる静けさが違い、低回転域の滑らかな立ち上がりと耳障りな成分の少ない音質が、作業用の静かな環境を素直に支えてくれます。フレームの剛性やフィンの仕上げまで触って分かる精度で、ラジエーター上でもケース排気でも癖が出ず、「どこに置いても破綻しない」安心感があります。PWM制御も素直で、期待通りの風の出方をしてくれるので、微妙な温度変動の追従が自然です。
次点はCOUGAR Apolar 120 ARGB。透明感のある風の通り方で、オープンな吸気に合わせると見た目も含めて気持ちよく、ARGBの発色が主役級に楽しい存在です。光るファンとしては騒がしすぎない音のトーンで、作業机に近い配置でも映えます。ケース前面での見栄えと通気のバランスを取りたい人にちょうど良い選択肢と言えるでしょう。
三番手はHYTE THICC FP12。厚みのあるファンらしく、ラジエーターやフィン密度の高い場所で腰のある風が出る体感があり、一定以上の回転数では頼もしさが増します。ただし設置スペースや気流設計に相性が出やすく、ケースによっては吸気側でやや風の当たりが強く感じられる場面もありました。Zero RPMモードを活かして「必要なときだけしっかり回す」構成にできるなら、冷却重視のマシンで強力な武器になります。
総合のベストチョイスはNoctua NF-A12x25 G2 LS-PWMです。静音と制御の素直さ、置き場所を選ばない扱いやすさで、日々の作業時間が長い人ほど満足度が高いと感じました。見た目と楽しさを優先するならCOUGAR Apolar 120 ARGB、厚みを活かしてラジエーター中心に組むならHYTE THICC FP12をおすすめしたいところです。
引用
https://noctua.at/en/nf-a12x25-g2-ls-pwm
https://cougargaming.com/products/case-fans/apolar-120-argb/
https://hyte.com/store/cooling/fans/thicc-fp12
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