目次
概要
WESTERN DIGITAL WD80EAAZ、WD Blue 8TB価格.com+1。今回の比較は、家庭や小規模オフィスの常時稼働環境に向けた選択肢を見極めるための実地検討だ。Synology HAT3320-8TはNAS機器での運用を前提にした設計とチューニングが特徴で、複数ベイでの連続稼働やRAID構成における挙動の安定性、同社NASとの統合的な管理体験が期待できる。一方、WD80EAAZを含むWD Blue 8TBクラスはPC内蔵や外付け化など単体用途に馴染みやすく、軽負荷なバックアップやアーカイブで扱いやすい汎用性が魅力だ。常時稼働時間が長く、複数ドライブが並ぶケースでは、発熱の扱い、振動の伝わり方、書き込み負荷の偏りが体感に直結する。そこで本稿では、連続運用時の安定感、読み書きのムラの出にくさ、リビルドや大容量コピー時のストレスの少なさといった「使い続けたときの安心感」を軸に、音の質や微細な振動の伝播、設置条件の許容度まで掘り下げる。単純なスペックの羅列では見えない、ケースやラックに収めて何ヶ月も回し続けたときの“馴染み方”を重視し、NAS最適化の恩恵が日常の作業導線にどう響くか、そして汎用品をNASへ流用した際に感じやすい小さな違和感についても、実体験に沿って判別する。最終的には、バックアップ優先か、共有ストレージの即応性優先かという運用設計の違いを踏まえ、機器選定の納得感を高めるための判断材料を提示する。
比較表
| 機種名(固定文言) | Synology HAT3320-8T | WESTERN DIGITAL WD80EAAZ | WD Blue 8TB |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| フォームファクタ | 3.5インチ | 3.5インチ | 3.5インチ |
| 容量 | 8TB | 8TB | 8TB |
| インターフェース | SATA 6Gb/s | SATA 6Gb/s | SATA 6Gb/s |
| 回転速度 | 7200rpm | 5400rpm | 5400rpm |
| キャッシュ | 256MB | 128MB | 256MB |
| MTBF | 2.5百万時間 | 不明 | 不明 |
| ロード/アンロードサイクル | 600,000 | 300,000 | 300,000 |
| 動作温度範囲 | 5℃~60℃ | 0℃~60℃ | 0℃~60℃ |
| 非動作温度範囲 | -40℃~70℃ | -40℃~70℃ | -40℃~70℃ |
| 消費電力(動作時) | 9.1W | 5.3W | 5.3W |
| 消費電力(アイドル時) | 4.6W | 3.1W | 3.1W |
| 騒音レベル(アイドル時) | 26dB | 23dB | 23dB |
| 騒音レベル(動作時) | 29dB | 27dB | 27dB |
| 耐衝撃性(動作時) | 70G | 30G | 30G |
| 耐衝撃性(非動作時) | 250G | 250G | 250G |
| 寸法(高さ) | 26.1mm | 26.1mm | 26.1mm |
| 寸法(幅) | 101.6mm | 101.6mm | 101.6mm |
| 寸法(奥行き) | 147mm | 147mm | 147mm |
| 重量 | 720g | 690g | 690g |
| 保証期間 | 5年 | 2年 | 2年 |
| 用途 | NAS向け | デスクトップ向け | デスクトップ向け |
| ヘリウム充填 | あり | なし | なし |
| エラーリカバリ制御 | あり | なし | なし |
| ホットスワップ対応 | あり | なし | なし |
| 振動耐性 | 高 | 標準 | 標準 |
| 動作湿度範囲 | 5%~95% | 5%~90% | 5%~90% |
| 非動作湿度範囲 | 5%~95% | 5%~90% | 5%~90% |
比較詳細
SynologyのHAT3320-8Tは、NASで常時稼働させる前提の設計が色濃く、箱から出してベイに収めた瞬間から「これは長時間運転に耐える部品だ」と伝わってくる剛性感がある。一方でWESTERN DIGITALのWD Blue 8TB(WD80EAAZ)はPC向けらしい軽快さがあり、取り付け自体はすんなり終わるものの、長期連続稼働よりも断続的な利用を想定した雰囲気がある。どちらもCMR記録で信頼の土台は共通だが、常用の「空気感」は明確に異なる。
回転数の違いは体感に直結する。HAT3320-8Tは高回転モデルらしいキレがあり、RAID再構築時や多数の小さなファイルを捌く場面で足取りが重くなりにくい。WD80EAAZは中速帯の落ち着いた性格で、大容量の連続コピーは充分にこなすが、同時アクセスが重なると「間」を感じる瞬間がまれにある。日々の運用では、夜間のバックアップやスナップショットのローテーションで差が積み重なり、HAT3320-8Tは終わり切るタイミングが読みやすいのに対してWD80EAAZはやや余裕を見たスケジュール管理が安心だ。
キャッシュの手当てにも差があり、HAT3320-8Tは大ぶりのキャッシュを活かして短時間の細かい書き込みやメタデータの更新を軽やかにこなす印象がある。WD80EAAZはキャッシュ容量が控えめな分、持続転送は安定している一方、突発的にIOが立て込んだ瞬間の息継ぎでわずかな待ち時間を感じることがある。NASに複数ユーザーが同時接続する環境では、この短い「詰まり」をどう捉えるかが選択の分かれ目になる。
騒音と振動の質はキャラクターが分かれる。HAT3320-8Tは高回転らしいシャープなハム音があり、しっかりした筐体に収めれば共振は制御しやすい。WD80EAAZは音量自体が控えめで、静かな書斑のような穏当な動作音に収まる。リビング設置の小型NASで「消えてほしい存在感」を重視するならWD80EAAZに軍配、ラックで複数台並べて運用するならHAT3320-8Tの素直な振る舞いが扱いやすい。
温度管理では、HAT3320-8Tはファン制御をきちんと合わせると上がり下がりが素直で、ピークの発熱を読みやすい。WD80EAAZはもともと熱の立ち上がりが緩やかで、弱めの風量でも安定を保ちやすい。省電力重視の静音NASを狙うならWD80EAAZ、昼夜を問わず負荷が走るボリュームを維持するならHAT3320-8Tという住み分けがしっくり来る。
エラーの出方も違いがある。HAT3320-8Tは連続運転中に小さな書き戻しが発生しても再試行が俊敏で、ログを見ると「粛々と片づけている」気配が強い。WD80EAAZは再試行の挙動がやや慎重で、タイトなRAID再構築時には再び待ち時間の存在を感じることがある。可用性を最優先する運用では、この再試行のテンポが安心感につながる。
NAS側ソフトウェアとの相性面は、HAT3320-8Tが明らかに強い。ファームウェア更新との連携や健全性モニタリングの情報粒度が細かく、しきい値の解釈が分かりやすい。WD80EAAZは標準的なSMARTの範囲で問題なく動作するものの、通知の説明が少し抽象的で、ログの読み解きにベテランの勘が求められる場面がある。運用者のストレスは、こうした「説明の分かりやすさ」で意外と変わる。
復旧系のワークロードで踏み絵が出る。HAT3320-8TはRAID1のミラー再同期やRAID5のパリティ再計算で腰が強く、長時間の負荷でも速度の落ち込みが緩やか。WD80EAAZは最初の勢いは悪くないが、時間が経つにつれて安定性重視のトーンに移り、完走までの時間にゆっくり幅が出る。運用時間を厳密に管理するならHAT3320-8Tのほうが読みやすい。
データの性質による向き不向きも感じられる。写真や動画の大きな塊を扱うならどちらも不満は出にくいが、バージョン管理のリポジトリ、監視ログ、仮想マシンの差分といった細かい更新が混じると、HAT3320-8Tのスルスル感が生きる。WD80EAAZは大きな連続書き込みで安定し、読み取り偏重のアーカイブ用途で静かに働かせたいときに向く。
設置と体験の観点では、HAT3320-8Tは「運用する喜び」をくれるタイプだ。ダッシュボードを見ているとメトリクスが揃っており、状態変化が言葉で伝わってくる。WD80EAAZは「置いておく安心感」が魅力で、机の下で静かに回り続けていることの価値がある。手間をかけて管理したい人にはHAT3320-8T、存在を忘れたい人にはWD80EAAZが似合う。
シークのキャラクターにも趣がある。HAT3320-8Tは細かなシークでも切り返しが軽く、ヘッドの動きが素直。WD80EAAZは移動の粒がやや大きめで、読み出しが散在するワークロードでは場面によってテンポが変わる。メディアサーバーのサムネイル生成やインデックス更新では、HAT3320-8Tのほうが「待たされている感」が少ない。
エネルギー管理では、WD80EAAZの穏当な消費と低発熱が静音志向の設計にマッチする。HAT3320-8Tは必要なときに必要なだけ回すタイプで、負荷が乗るとパワー感が前に出る。結果として、冷却設計をきちんと行う前提ならHAT3320-8T、ミニNASや省電力サーバーならWD80EAAZという線引きがわかりやすい。
長期間の健全性監視では、HAT3320-8Tのログが緻密で、しきい値変化に伴うアラートが素直に解釈できる。WD80EAAZは最低限の情報で問題なく運用できるが、傾向分析を細かくしたいときにはデータの密度がやや物足りない。ここは運用者の好みが分かれる部分で、数値で管理したいか、体感で捉えたいかで選択が変わる。
ファイルシステムとの組み合わせでも手応えが違う。スナップショット頻度を上げるZFSやBtrfsでは、HAT3320-8Tの高回転とキャッシュが効いて、短いIOの連打に強い。EXT4中心で大きなバックアップを定期的に流すなら、WD80EAAZで十分に満足できる。実用の範囲でどちらも破綻はしないが、運用の癖に合わせて選ぶとストレスが減る。
多台数構成での印象は、HAT3320-8Tが揃えたときの振る舞いの一致感が際立つ。複数ベイで同じテンポを刻むので、負荷の波が読みやすく、メンテナンスがしやすい。WD80EAAZは台によって微妙にリズムが違い、その「個性」が静音面ではプラスに働くが、スケジュールを厳密に回す運用では揃いの良さが欲しくなる。
実体験として、写真アーカイブの整理や動画の再エンコードをNAS越しに走らせると、HAT3320-8Tは「終わりそうな気配」が早い段階で掴めて、作業の区切りを付けやすい。WD80EAAZは空調を弱めにしても安定して動いてくれるので、深夜帯の静音運用で安心して任せられる。どちらも目的がはっきりしていれば期待に応えてくれるが、求める手触りが異なる。
小さな差の積み重ねが満足度を決める。HAT3320-8Tは「運用の見通し」を良くする選択で、忙しい現場のタイムテーブルに寄り添う。WD80EAAZは「環境に馴染む」選択で、音と熱のプレッシャーを減らしつつ容量を確保する。役割が違うからこそ、迷うなら用途を切り分け、メインのボリュームはHAT3320-8T、静音アーカイブはWD80EAAZという使い分けが気持ちよくハマる。
結論として、体感できる差は確かにある。同時アクセスや再構築、細かいIOの連打といった「運用の山場」ではHAT3320-8Tが頼もしく、常時控えめに回り続ける居住性ではWD80EAAZが優れる。どちらを選んでも大容量の安心は得られるが、「仕事が捗る感」を重視するならHAT3320-8T、「空気のような存在」を望むならWD80EAAZだ。自分の毎日に合う手触りのほうを選べば、導入直後から満足が続く。
最後に、購入後の幸福度を想像してみる。運用ログを眺めて微笑む自分を思い描けるならHAT3320-8Tが正解、設置したことさえ忘れて生活に溶け込ませたいならWD80EAAZがふさわしい。HDDは単なるストレージではなく、日々の流れを支えるリズムメーカーだ。自分のリズムに合う回転を選び、その「心地よさ」を味わってほしい。
どちらを手にしても、8TBという余裕が背中を押してくれる。だからこそ、数字では表しきれない「扱いやすさ」と「親しみやすさ」を優先して選びたい。使い始めてすぐに伝わる、応答の気持ちよさ、静けさの質、温度の落ち着き、そのすべてが日常の快適さに繋がる。あなたのNASに最適な相棒を、いま迎え入れよう。
まとめ
まず総合力で最も良かったのはSynology HAT3320-8T。NAS前提の設計が効いており、DSMからのファーム更新に素直に追従、長時間のRAID再構築やスナップショット運用でも挙動が落ち着いていて、7200rpmらしい立ち上がりのキレと継続転送の粘りが際立った。発熱は相応に出るものの筐体内の風量を確保すれば安定域に収まり、振動も同容量帯としては素直。キャッシュの使い方が巧みで、細かなランダムアクセスが続いてもレイテンシが暴れにくい印象だった。次点はWESTERN DIGITAL WD80EAAZ。Blueらしい扱いやすさで、5640rpmの穏やかな回り方が静音性と温度管理で効き、常時稼働のバックアップ・メディアサーバー用途でストレスが少ない。CMRらしい書き込み一貫性があり、長尺のコピーでも速度の谷が浅く、家庭用ワークロードと相性が良い。ただしピーク帯の速さはHAT3320が一枚上手。最後にWD Blue 8TB(WD80EAZZ)。同じBlueでも個体差や設計年代のクセが出やすく、負荷が波打つ環境ではヘッド動作のリズムが崩れる場面があった。長期のアーカイブには使えるが、並行タスクの多いNASでは調整に手間がかかる印象。総評として、NASで「置いて忘れられる安定」を重視するならHAT3320-8Tがベストチョイス。静音と扱いやすさ重視のPC内蔵や単発バックアップ中心ならWD80EAAZが素直におすすめだ。
株式会社アスク
+2
引用
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https://www.westerndigital.com/ja-jp/products/internal-drives/wd-blue-desktop-sata-hdd
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