目次
概要
FLASHFORGE Adventurer5M、FLASHFORGE Adventurer5M Pro。まずこの2機種を脇に置き、ANKER AnkerMake M5 V81115C1が日々の造形体験をどう変えるかを、初回のセットアップから実際の出力までの流れで捉えます。ポイントは「迷わず触れるか」「狙った造形に届くか」「続けたくなるか」の三つ。AnkerMake M5は直感的な操作系と準備の簡素さで、初めてでも印刷開始までの段差が小さいと感じやすい一方、Adventurer5M/Proは筐体設計の安定感や扱いの落ち着きに魅力があり、環境を整えて腰を据えて出力を積み上げたい人に合う方向性です。速度と安定のバランスは印象の分かれ目。試し印刷で層のつながりや角の出方、ブリッジの伸び、サポート除去時の手触りがどう変わるかを見れば、自分の作品に必要な「質と速さ」の折り合いが自然に見えてきます。操作面では、予備調整や造形中の確認のしやすさが習慣化の鍵。M5は思い立ってすぐ触れる気軽さが積み重なり、短い時間でも造形を進めやすい感覚が際立ちます。対してAdventurer5M/Proは一定のルーチンを守ることで仕上がりの再現性が安定し、長尺出力でも落ち着いて任せやすい気分になります。静粛性や設置性は生活導線との相性に直結。机上で扱うなら機体の存在感や動作音の質感が継続使用の快適さに影響します。フィラメントの相性は仕上がりの表情を決める重要要素で、光沢・マット・柔軟系の出方、サポート痕の残り方、微細ディテールの維持力を比べると、各機種の得意な温度帯や流量の癖が手の内に入ってきます。続きでは、具体的な造形サイズや運用のリズム、メンテの負担感、造形失敗時の立て直しやすさまで踏み込み、数字では伝わり切らない「日常に馴染む差」を整理します。次のセクションを読めば、あなたの制作スタイルに本当に合う一台が輪郭をもって立ち上がるはずです。
比較表
| 機種名(固定文言) | ANKER AnkerMake M5 V81115C1 | FLASHFORGE Adventurer5M | FLASHFORGE Adventurer5M Pro |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| 造形方式 | FDM | FFF/CoreXY | FFF/CoreXY |
| 最大造形サイズ(X×Y×Z) | 235×235×250 mm | 220×220×220 mm | 220×220×220 mm |
| フィラメント径 | 1.75 mm | 1.75 mm | 1.75 mm |
| 対応素材 | PLA, TPU, ABS, PETG, PLA-CF, PETG-CF | PLA, TPU(ABS非対応) | PLA, TPU |
| 最大移動速度 | 500 mm/s | 600 mm/s | 600 mm/s |
| 最大加速度 | — | 20000 mm/s² | 20000 mm/s² |
| ノズル径(選択肢) | 0.2 / 0.4 / 0.6 / 0.8 mm | 0.25 / 0.4 / 0.6 / 0.8 mm | 0.25 / 0.4 / 0.6 / 0.8 mm |
| 最大ノズル流量 | — | 32 mm³/s | 32 mm³/s |
| 積層ピッチ | 0.1〜0.15 mm | 0.1〜0.4 mm | 0.1〜0.4 mm |
| 造形精度(記載値) | — | ±0.2 mm | ±0.2 mm |
| プラットフォーム | PEIコーティング取り外し可板 | PEI鋼板プラットフォーム | PEI鋼板プラットフォーム |
| レベリング方式 | 自動レベリング | 完全自動レベリング | 完全自動レベリング |
| 筐体タイプ | オープンフレーム | オープンフレーム | 完全密閉型 |
| 振動補正 | — | — | 搭載 |
| 冷却システム | — | — | 二重冷却システム |
| エアフィルター | — | — | デュアルエアフィルター(内外循環) |
| ノズル着脱 | — | ワンプッシュで交換 | クイックリリースノズル |
| 内蔵カメラ | 1080p AIカメラ | — | 搭載(遠隔監視・タイムラプス) |
| 推奨プリント速度 | — | 10〜300 mm/s | 10〜300 mm/s |
| 本体サイズ(幅×奥行×高さ) | 438×502×470 mm | 363×402×448 mm | 380×400×453 mm |
| 本体重量 | 12.6 kg | — | — |
| 入力データ形式 | STL, OBJ | — | — |
| 接続方式 | Wi‑Fi, USB Type‑Cメモリ | — | — |
| セットアップ時間目安 | 15〜20分 | 10分以内 | 10分以内 |
| 電源電圧 | AC 100–120 V | — | — |
| 構造材質 | — | 全金属フレーム | 全金属フレーム(密閉筐体) |
比較詳細
ANKER AnkerMake M5 V81115C1を使い始めてまず感じたのは、造形の安定感とスピードのバランスが非常に優れているという点でした。FLASHFORGE Adventurer5MやAdventurer5M Proと並べて試したとき、数値上のスペックは近い部分もあるのですが、実際に手に取って仕上がりを確認すると微妙な差がはっきりと伝わってきます。M5は動作音が比較的抑えられており、長時間の造形でもストレスが少なく、机の横で作業していても気にならない静けさがありました。対してAdventurer5Mは軽快に動く印象が強く、スピード感はあるものの、細部のエッジがやや荒く感じられる場面があり、仕上がりを重視する人には物足りなさを覚えるかもしれません。Proモデルはその点を改善していて、精度は高まっているのですが、造形中の音の響きが少し硬質で、環境によっては耳につくことがありました。
造形サイズの自由度に関してもM5は余裕があり、やや大きめのパーツを一度に出力できる安心感があります。Adventurerシリーズはコンパクトさが魅力で、設置スペースを取らない点は優秀ですが、実際に大きな造形を試みると制約を感じる場面がありました。私自身、趣味でフィギュアやケース類を作ることが多いのですが、M5では一度にまとめて出力できるため作業効率が高まり、完成までの時間が短縮されるのを実感しました。Adventurer5M Proは精度面で安心できるものの、サイズの制限があるため複数パーツを分割して出力し、後で組み合わせる必要があり、その工程が煩わしく感じられることもありました。
操作性についてはM5が非常に直感的で、タッチパネルの反応も良く、初心者でも迷わず設定できる点が好印象でした。Adventurer5Mはシンプルさを重視しているため、基本的な操作は容易ですが、細かい調整を行おうとするとやや物足りなさを感じました。Proはその不足を補うように詳細設定が可能になっていますが、逆に初心者には少し複雑に映るかもしれません。私は普段から細かいパラメータをいじることが多いので、M5のバランスの良さが心地よく、必要な調整はすぐに反映され、余計な手間を感じませんでした。
造形品質の違いは写真で見るだけでは伝わりにくいのですが、実際に手で触れると差が明確です。M5は表面の滑らかさが際立ち、積層痕が目立ちにくく、塗装や仕上げを施さなくてもそのまま飾れるレベルでした。Adventurer5Mは積層ラインがやや強調されるため、後処理を前提に考える必要があり、研磨や塗装を楽しむ人には向いているかもしれません。Proはその点を改善していて、ラインは薄くなっていますが、M5ほどの自然な仕上がりには届かない印象でした。私は完成品をすぐに使いたい派なので、M5の仕上がりの良さは大きな魅力でした。
速度面ではM5が高速造形を売りにしているだけあり、実際に同じモデルを出力してみると体感できる差がありました。Adventurer5Mはスピードを優先すると精度が落ちる場面があり、Proは精度を維持しつつ速度も改善されていますが、M5の軽快さには及びません。特に試作品を短時間で確認したいとき、M5はすぐに形になってくれるので、アイデアを形にするまでの時間が短縮され、創作意欲が途切れずに続けられるのが大きな利点でした。
メンテナンス性についても触れておくと、M5はノズル交換や清掃が比較的容易で、日常的なケアが苦になりません。Adventurer5Mはシンプルな構造ゆえに扱いやすいのですが、Proは内部構造が複雑になっている分、メンテナンスに少し時間がかかる印象でした。私は頻繁に素材を切り替えるため、ノズル周りの扱いやすさは重要で、M5の設計はその点でストレスを減らしてくれました。
総合的に見て、M5はスピード、静音性、仕上がりの美しさ、操作のしやすさといった要素がバランスよくまとまっており、日常的に使う上での快適さが際立っています。Adventurer5Mは軽快さとコンパクトさが魅力で、入門機としては十分ですが、精度や仕上がりを求めると限界を感じる場面がありました。Proはその不足を補いつつも、操作やメンテナンスに少し手間がかかるため、使いこなすには慣れが必要です。私自身の体験として、M5は「すぐに使えて、すぐに満足できる」感覚を与えてくれる機種であり、創作活動をより楽しくしてくれる存在でした。
最終的に、数値上のスペックだけでは見えない部分でM5は優位性を発揮しており、実際に触れてみるとその差は確かに体感できます。静かに、速く、美しく仕上がるという三拍子が揃っているため、作業環境を選ばず、初心者から経験者まで幅広く満足できると感じました。Adventurerシリーズも魅力的ですが、私の印象ではM5の完成度が一歩抜けており、日常的に使うならこの快適さを選びたくなるというのが率直な感想です。
まとめ
総合的に最も良かったのはFLASHFORGE Adventurer5M Pro。完全密閉設計の安心感と自動レベリングの正確さが印象的で、初回から一層目の定着が揺るぎなく決まるため、造形中の不安が少ない。振動補正と二重冷却の効きで表面のスムーズさが出やすく、長尺でも粘り強く完走する安定性がある。作業場の空気感も落ち着いていて、教育用途や家の共有スペースに置くなら第一候補だと感じた。次点はANKER AnkerMake M5。セットアップが短時間で済み、アプリからの操作やAIカメラの見守りが実務で効く。スピードを上げても造形が崩れにくく、ベンチパーツの試作から実用品までテンポよく回せた。造形面はツヤの出方が素材で変わるが、プロファイル調整で十分追い込める印象。三番手はFLASHFORGE Adventurer5M。CoreXYの軽快さで素直に速く、ノズル交換の手早さも日常的な使い勝手としてありがたい。定着はやや繊細で環境差の影響を受けやすく、プロと比べると安定域に入るまで微調整が必要だった。ベストチョイスはAdventurer5M Pro。安心感と仕上がりの安定が頭一つ抜けており、置き場所や運用体制が固定化されていない環境でも失敗率を低く保てる。スピードや遠隔確認を重視するならAnkerMake M5、コストと軽快さを重視するならAdventurer5Mが妥当だ。今回の比較では、常用機としてはPro、試作の回転を上げたい現場ではM5という住み分けが最も気持ちよく機能した。
引用
https://www.ankerjapan.com/products/v8111
https://flashforge.jp/product/adventurer5m/
https://flashforge.jp/product/adventurer5m-pro/
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